沖縄県の健康事情
沖縄は、日本でも特に長寿県として知られてきましたが、近年その平均寿命に変化が見られるといわれています。これは必ずしも医療環境の問題だけではなく、食生活の変化が背景にある可能性があります。
数十年前まで沖縄県の平均寿命は男女とも全国1位、近年でも男性の順位は大幅に下落したものの、女性の順位は1位でした。ところが、平成27年度(2015年)厚生労働省都道府県別生命表の概況によりますと、平均寿命の全国平均は男性が80.77歳、女性が87.01歳。一方、沖縄県の男性の平均寿命は36位の80.27歳、女性は7位の87.44歳となっており、男性においては全国平均を下回っています。
沖縄は医師の数が以前よりも増加しているため、医療事情は好転していると考えられるにも関わらず、平均寿命においては順位が下がっています。沖縄の長寿の理由の一つは伝統的な食生活にあると言われてきましたが、食生活の乱れが加速していることが、平均寿命の相対的な悪化の要因となっていると考えられます。
沖縄の伝統的な食事の特徴



沖縄料理と言えば、ゴーヤチャンプルー、海ぶどう、もずく、そして泡盛!が連想されるでしょうか。僕自身、沖縄の郷土料理を味わう機会があり、抱いた印象は、豚肉の頻度が圧倒的に多い、魚も多い、普段僕たちが口にする豆腐よりも硬くて濃い豆腐をふんだんに使用している、野菜・海藻類が多い、そしてチャンプルー(まぜこぜ)が多い、というものです。豚肉は茹でて上手に脂肪分を処理しているため、繰り返し口にしてもしつこくありません。全体的に塩味よりも自然の出汁を効かしていて、味が濃厚です。そしてたくさんの食材を使用するので、栄養のバランスが良いです。さらに注目したのは「豆腐よう」という食べ物。沖縄の島豆腐を米麹、紅麹、泡盛などで発酵・熟成させた発酵食品です。豆腐というより、まるでチーズのように濃厚でお酒のお供になります。このうち「赤い豆腐よう」は紅麹を使用して発酵されているのですが、この紅麹にコレステロールを下げる作用があるんだそうです。
こういった食事には次のような特徴があります。
- 豆腐や野菜、海藻類が豊富で、食物繊維やビタミンが摂りやすい
- 豚肉も脂身を工夫して調理されており、重たさが少ない
- 発酵食品である「豆腐よう」のような独特の食品があり、発酵食品の恩恵が期待できる
これらは現代の栄養学で推奨されているバランスのよい食事に近い要素を含んでいます。
一方で、今の沖縄の食環境


しかし同じ沖縄でも、伝統食だけではなく、ファーストフードや加工食品の消費が増えています。米軍基地があり、本土よりも早くからアメリカの影響を受けてきたからだと言われています。実際沖縄には在日米軍とその家族がたくさんいて、よく英語が飛び交っていますし、アメリカンヴィレッジがありますし、ラウンドアバウト(アメリカなどでよくある環状交差点)も目にしました。ただし、沖縄のサイズ感は日本そのもので、アメリカのように広大ではありません。(米軍基地のサイズ感はアメリカそのものですが。。)
そのため食事面でも欧米化が進み、ファミレスやファーストフード店を多く目にします。伝統的な沖縄郷土料理を探す方が苦労します。
アメリカの肉肉しいハンバーガーが懐かしく、沖縄でハンバーガーや加工肉を食べる機会がありました。牛肉の割合が圧倒的に高くて、ジューシーで美味しかったです。また、沖縄には人気のポーたまというおにぎりがあります。卵焼きとランチョンミートのおにぎりです。これはこれで美味しいのですが、ソーセージ同様加工肉であるのと、栄養バランスから言うと健康的とは言えないです。(見た目はクールですけどね。)これらは一般に、
- 食物繊維が少ない
- 高エネルギー・高脂肪になりやすい
- 血糖値の急上昇を招きやすい
といった特徴があり、生活習慣病のリスク要因になりやすいです。
ハンバーガーは極端ですが、小麦粉の摂取が増加していたり、沖縄そばにしても塩分や化学調味料が増えているように感じました。沖縄ではあまり米が獲れないので、昔はさつまいもを主食にされていたそうですが、さつまいものメニューはあまり目にしませんでした。
若者や働く世代は、外食などでステーキやハンバーグを好み、伝統食が敬遠された結果、野菜の摂取量激減、動物性脂肪摂取量の増加、塩分摂取量の増加などで生活習慣病が増加しているのではないかと考えられます。
医師として伝えたいこと
僕が沖縄で食べた郷土料理は、栄養的にバランスが取れていて、胃にも優しく、体に染みるように感じました。しかし、同時に欧米化した食事の影響が身近にあることも実感しました。
これは沖縄だけの話ではなく、全国どこでも起きている食生活の変化です。忙しい現代人にとって手軽な食事は魅力的ですが、体への負担や慢性的な炎症につながるリスクが高まるという側面もあります。メリハリのある食習慣が、長期的に体の調子を支えます。
- 食事は単なる「好き嫌い」ではなく、体の機能に影響します。
特に血糖値や脂質代謝は、毎日の食習慣によって大きく変わります。 - 「健康的な食事」は完璧を目指すものではありません。
誰にでも好きなものを食べたい瞬間はあります。大切なのは 普段のベースを整えることです。 - バランスの視点を持つことが最も重要です。
伝統食に見られるような野菜・海藻・発酵食品を基本にしつつ、週末や外食では好きなものを楽しむ。
沖縄の伝統的な食事は、現代の栄養学でも評価される点が多くあります。一方で、食生活の変化によるリスクも現実として目の当たりにしました。この体験は、食べるものが体にどのように影響するかを考えるきっかけになりました。
今の自分の食習慣を振り返り、どこを変えるべきか、何を続けるべきかを考えることが、健康への第一歩です。

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