何事においてもバランス感覚は重要です。「過ぎたるは及ばざるが如し」ということわざがありますし、儒教には「中庸」という概念があります。そのときどきの物事を判断する上で、どちらにも偏らず、かつ通常の感覚で理解でき、過不足なく調和がとれていること、というような意味でしょうか。健康面においてもこのバランス感覚は非常に重要です。
バランス感覚を欠いた具体例
ちまたに流行る健康食品やサプリメントの類は、その栄養素が不足している人にとっては効果を発揮するかもしれませんし、冬の欠乏時にビタミンDのサプリを摂取したり、流行り病にかかったときにビタミンCのサプリを摂取してよく休む、といった使用方法は効果的でしょう。しかし、野菜やタンパク質など普通に満遍なく食事ができている人が、サプリメントで特定の栄養素を補充し続けることに健康上のメリットがあるかどうかは分かりません。栄養が偏ることで、癌細胞が育ちやすい環境が生じる可能性すらあります。ビタミンA, D, E, Kは脂溶性ビタミン(油に溶けるもの)で過剰に摂取すると体内に蓄積して、過剰症を起こすこともあります。そもそも、健康食品やサプリメントの摂取で本当に健康になったという科学的根拠はほとんどないと言えます。
高いお金をかけて、健康食を食べて満足していても、その一方で食品添加物だらけの食物を摂取していては元も子もありません。日本では世界中で禁止されている添加物がたくさん認可されており、ラウンドアップなど発癌性のために世界で禁止されている農薬や除草剤が日本では大量に使用されています。私たちが自分達で意識を高めて避けなければ、嫌でもたくさんの有害物質を摂取することになります。その結果、生活習慣病や精神病や癌を発症する危険性が高まります。まずは意識して、有害な食品、特に加工食品の摂取を避けましょう。
特定の食材に偏って摂取することも望ましくありません。五大栄養素(炭水化物、脂質、タンパク質、無機質、ビタミン)のバランスが悪いですし、その食材(生鮮食品)が本当に安全であるかどうかも分かりません。農薬・化学肥料・ホルモン剤・抗生物質・重金属などが含まれている可能性がありますし、農薬で汚染された遺伝子組み換え穀物で飼育されたメタボな家畜由来の食肉である可能性もあります。自分で生産している、もしくは生産者から直接入手している食材であれば、少しは安心感もありますが、そうでなければ体にとって有害となる物質を避ける意味でも、いろいろな食材を摂取してリスクを分散するのが良いでしょう。
健康やダイエットのために、食事だけ見直す人がいます。糖質制限やカロリー制限をする、あるいは酵素汁を飲んでダイエットなどという、いかがわしい商品もあります。健康増進して病気にならないためには正しい栄養が大事ですが、血流改善や代謝改善も必要で、そのためには運動をして筋肉をつけなければなりません。そして、睡眠をしっかりとって心身を休ませることも重要なのです。糖質制限も有効ですが、あまり極端なことをするとバランスを崩します。
運動は非常に大切ですが、マラソン選手や格闘技の選手が長寿であるわけではありません。これは一般の人に対して言えることですが、一気に運動して疲労が蓄積して、免疫力が低下したり、怪我をしたりすることもありますので、バランスを考えて運動量を決める必要があります。
最もバランス感覚が必要なのは
最後に、今一番バランス感覚を欠いているのは、医療に対する盲信ではないかと思います。病気になる原因は遺伝性のものもあれば、ウイルスや細菌のこともありますが、多くの慢性疾患(生活習慣病と種々の血管障害、癌、精神病、アレルギー、自己免疫疾患など)の原因は環境要因にあります。つまり、どのようなものを口にしてきたか、どれだけ運動や睡眠を疎かにしてきたか、どれだけストレスに晒されてきたか、にあるのです。そのことを考慮せずに、病院で検査をして、最大限の投薬をしようとする医療者の姿勢はバランスを欠いていますし、患者が医療者や医療そのものを盲信しているのも、バランスの欠如だと思います。
バランスを身につけるためには、知識と経験が必要です。知識がなければ、周りが見えないですし、経験が足りなければ過信してしまいます。医療者も患者も正常なバランス感覚を身につけるためには、健康教育が広く普及し、みなさんが健康的な生活習慣を自ら実践していくことが大切です。そうすることで、日本人が健全な肉体と健全な魂を獲得して、医療の多くの問題を解決し、明るい未来に向かっていけると思います。僕は健康教育格差をなくすために、これからも情報発信や活動をしていきます。✊