プチ断食(間欠的ファスティング)のすすめ

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 現代は飽食の時代と言われ、コンビニやファストフードで簡単に食べ物が手に入りますし、身の回りにもお菓子などの食べ物が散乱して、食生活が乱れています。絶えず食物を摂取することで、内臓が休まる時間がなく、肥満などの生活習慣病になったり、脳や身体がすっきりしない状態になります。食べるタイミングを管理することで、ダイエットを成功させたり、体の調子を整えることが可能になりますので、ぜひ挑戦してみましょう。

飽食の時代はいつから始まった?

 人類の祖先が誕生したのはおよそ500万年前のアフリカです。その後、狩猟社会から農耕社会へ移行していくのが、1万2千年ほど前と言われています。農耕・牧畜で食料を生産するようになってから、人口が増加していきました。
 日本で1日3食の習慣が始まったのは江戸時代の元禄期(1688年〜1704年)頃です。江戸では玄米ではなく白米を食べるようになったこと(白米は血糖値が変動しやすく、玄米よりも空腹を感じやすい)、江戸で大火事があり、町を復興するために集まった大工や左官などの肉体労働の増加、外食産業が栄えたこと、菜種油が広く出回り、人が起きている時間が長くなったことなどが理由と考えられています。
 1868年、明治維新により西洋文化が流入し「肉食禁止」が公に解かれました。そして、日本人は西洋料理をそのまま受け入れるのではなく、牛鍋やカレーライスやコロッケなど、和食化して受け入れていきました。
 昭和の終盤頃(1970年代)には、インスタント食品の多用、コンビニやファミレスの登場などで、今の食生活とほぼ同じ様式となります。空腹を感じたら我慢する必要はなく、保存がきく超加工食品を気ままに摂取することが可能となりました。
 農耕生活を始めるようになってから、食物生産は徐々に増加したものの、天候の影響を大きく受けますし、経済や戦争の影響により、十分な食にありつけないことが以前は多かったと思われます。このようにしてみると、人類の長い長い歴史の中で、飽食の時代というのはほんの50年程度のわずかな期間であることがわかります。

断食(ファスティング fasting)の効果

 人類の歴史は飢餓との戦いであったため、人体は空腹に対しては適切に対応する仕組みを持っていますが、過食に対しては対応する仕組みを持たず、すぐに病気を発症してしまいます。ヒトは本来空腹に強いばかりではなく、以下のようなメリットがあります。

  • 胃腸を休める
    – 食べ物を摂取して消化吸収している間に次の食べ物を摂取する、ということを続けていくと内臓は休む暇がなく、疲弊していきます。疲れた胃腸や肝臓の働きは鈍くなり、栄養の吸収やデトックス(毒素排出)が悪化します。腸内環境が悪化し、免疫力も低下します。断食をすることで内臓機能が正常化し、免疫力がアップし、細胞を老化させる活性酸素の量を減らすことができます。
  • 脂肪を分解し、エネルギー源に活用する(ケトン体代謝)
    – 空腹の時間の間、肝臓に蓄えられたグリコーゲンを利用して、エネルギーを作ります。グリコーゲンが尽きると、体脂肪から分解された脂肪酸がケトン体に変えられて、エネルギー源として使われます。空腹の時間が長ければ、体内の余計な脂肪が分解されて、減っていきます。
  • 血流を改善させる
    – 断食をして脂肪が分解されると血液中の脂質が減り、余分な栄養や老廃物をもう一度代謝して排泄するので、血液がきれいになります。血液中の糖質も減らすことができ、血管の状態が改善されて血流が良くなります。生活習慣病のリスクをかなり減らすことができます。
  • 脳のリフレッシュ
    – 消化にエネルギーを使わなくてすむため体をしっかり休められ、睡眠の質が向上します。空腹時に分泌されるグレリンという空腹ホルモンは、がん予防・胃腸の改善・自律神経調整・ストレス解放・炎症抑制などの働きがありますが、成長ホルモンを分泌させたり、海馬でのシナプス形成を促進することで、記憶力のアップや認知症の予防に役立ちます。
  • オートファジー(自食作用)が働く
    – 細胞内の古くなったタンパク質を除去し、新しいものに作り変えます。食べ物がないと体は生存するために、体内の古くなったものをリサイクルしようとします。オートファジーが働くことで細胞が内側から生まれ変わり、アンチエイジング効果が得られます。また、糖尿病、がん、認知症をはじめとした慢性疾患、感染症などの予防効果があると考えられています。
  • 長寿遺伝子(サーチュイン遺伝子)の活性化
    – 空腹時間を長く保つとサーチュイン遺伝子が活性化し、長生きすることが示唆されています。しかし、まだ明確な結論が出るには至っておらず、過去のサルを使った動物実験において、カロリー制限と老化に関する様々な症状や寿命との関連性が指摘されたり、否定されたりしています。しかしながら、現代人は飽食により糖尿病などの生活習慣病が増加しており、バランスを超えない範囲内でのカロリー制限や空腹時間を設定することは、健康長寿を目指す上で鍵となると考えられます。

プチ断食(間欠的ファスティング)の実践法

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 長時間の断食は長続きしませんし、筋肉量が減少するというデメリットもあります。そのため、短時間のプチ断食(間欠的ファスティング)がおすすめで、継続することでファスティングの効果が十分に期待できます。やり方は12時間〜16時間食べない時間をとります(例:夜ご飯を20:00に食べ終わったら、翌日12時まで食べない)。断食の間は水分を十分にとります。糖質を含まないお茶やコーヒーは積極的に摂取し、食欲を抑えます。それでも空腹が我慢できない場合は健康的なオイルを飲み物に混ぜたり、ナッツ類は例外的にOKです。ファスティング後の食事には、精製された炭水化物や加工食品はなるべく避けましょう。

僕が実践した感想 🤗

 医師という職業柄、間欠的ファスティングを常には実行できていません。ストレッチと筋力トレーニングもしているので、タンパク質の血中濃度をある程度保ちたいという気持ちもあります(←言い訳😅)。それでも外来や手術がないデスクワークの日や週末などにやることがあり、空腹感はもちろんありますが、頭が冴えているのを実感します。体重を確実にコントロールできるのも利点です。朝食をスキップすると朝の時間に余裕が生まれて嬉しい面もあります。空腹コントロールには亜麻仁油やMCTオイルを摂取したりします。バターを舐めるのでも可能でしょう(マーガリンは絶対❌)。

 そして、睡眠の質が向上することは確実に実感できます。寝る前に食べてしまうと、消化器官が働いてしまうことや血糖値の上下により成長ホルモンの分泌が低下することで、深い睡眠を得ることが困難になるからでしょう。朝食をスキップできないにしても、夕食後はたとえちょっとした果物であっても全く摂取しないことをお勧めします。

 この記事を書いていて、僕も日常のコンディションアップやリバースエイジングのために間欠的ファスティングにもう少し真剣に取り組もうと思いました。ただ、ストイックにやり過ぎたり、あまり偏ってしまうとバランスを崩してしまったり長続きできないこともあるので、目的に応じて週に1, 2回とか週末だけ実行するというのでも効果が期待できると思います。

まとめ

 間欠的ファスティングは代謝のスイッチを変換する役割があります。糖質中心から脂質を燃やす方向の代謝スイッチに変換し、食べなくても大丈夫な方向にもっていきます。それによる健康上の効果はダイエット、生活習慣病の改善、アンチエイジングや日常のコンディション改善など多岐に渡ります。そもそも現代人は夕食を食べ終わってから、次の日の朝食を食べるまでの12時間の断食でさえ達成できていないのが大半ではないでしょうか。健康を維持・向上する上で空腹時間を作るのはヒトの生理機能に合っていることなので、バランスをとりながら実践していきましょう👍


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