健康的な油脂を積極的に摂取すべき理由とは?


 脂肪が身体に良くないということで、低脂肪牛乳やヨーグルトを摂取したり、鶏のささみを必死に食べている方もおられると思います。脂肪は昔から不健康なものと言われ続けてきて、脂肪があると血管が詰まったり、体重が増加したりとか、心臓発作が起きるなど、脂肪に対する恐怖がありました。しかし、最近の研究では、コレステロールの薬を飲んで、下げすぎてしまうことで、脳の機能が悪くなったり、死亡率が増加したりなど、逆にダメージが生じることが分かってきました。したがって、薬を使用するのはほどほどにした方が良いでしょう。悪い脂肪を避けつつ、良い脂肪を積極的に摂取するモチベーションアップのために、脂肪についての知識を以下に整理したいと思います。

脂肪が大事な理由

 脂肪が大事な理由は、1. 細膜は脂質二重層で構成されています。したがって、良い脂肪が足りていないと、細胞が元気でなくなります。2. 脳の60%は脂肪でできています。したがって、良い脂肪を摂っていないと脳機能が低下します。脳の発達にも脂肪が重要で、赤ちゃんが飲む母乳は高脂肪であり、脂肪がメインで脳の栄養になります。大人にとっても質の良い脂肪を摂取することで、脳機能や細胞全体の働きを活性化することに繋がります。良質な脂肪が不足していたり、質の悪い脂肪が増えすぎると、脳を中心に全身の機能が低下することになります。

脂肪酸の種類

 一般的には、常温(15〜20℃)で個体のものを「脂」、液体であるものを「油」と使い分けています。常温で個体である肉の脂などには飽和脂肪酸が多く含まれ、液体である植物油や魚油などには不飽和脂肪酸が多く含まれています。

  • 飽和脂肪酸 – fat, 脂, 常温で個体が多い
  • 不飽和脂肪酸 – oil, 油, 常温で液体が多い

*不飽和脂肪酸の炭素-炭素間の二重結合(C=C)を境目にして、水素原子が同じ側にある場合をシス(cis)型二重結合、反対側にある場合をトランス(trans)型二重結合といいます。

*トランス脂肪酸は牛などの胃の中で微生物が作るため、天然でも乳製品や肉に少量含まれます。大部分は植物油を加工した工業由来で、植物油に水素を添加して固まりやすくした硬化油と、臭いを除くために200℃以上処理する際にできる食用植物油があります。

避けるべき油脂

  • トランス脂肪酸

 トランス脂肪酸はLDL(悪玉)コレステロールを増やし、HDL(善玉)コレステロールを減らしたり、2型糖尿病を発症させて動脈硬化を促進し、心疾患のリスクを高めるだとか、免疫機能を低下させるアレルギー疾患を増加させる、各種の癌のリスクが高まるなどの報告がたくさんあります。また、細胞のオートファジー(自食作用)を阻害することで、細胞がストレスにさらされやすくなり、老化が促進すると考えられます。このことから、あらゆる病気の原因になると考えられ、絶対に避けるべき成分です。

 WHOでも2023年までに工業的に生産されたトランス脂肪酸を排除することを優先課題として挙げています。

 日本ではトランス脂肪酸を含有する食品がスーパーに普通に陳列され、日常的にそれらを口にしている消費者が多いです。部分的に水素添加した油脂を用いて作られたマーガリン、ファットスプレッド、ショートニングや、それらを原材料に使ったパン、ケーキ、ドーナツなどの洋菓子、古くなった揚げ物(飲食店の揚げ物)などが挙げられます。こういった加工度の高い食品は中毒性があり、すぐにやめることは難しいかもしれませんが、その有害性から世界的には排除される流れにあり、間違いなく避けなければならないと認識してほしいです。

  • 人工的に製造された植物油・植物油脂(サラダ油、キャノーラ油など)

 ω6脂肪酸は必須脂肪酸のひとつですが、現代人は幼少期から油脂混合物や加工食品に含まれる植物油・植物油脂を過剰に摂取しています。過剰に摂取したリノール酸は体内で炎症物質となり、慢性炎症を引き起こしますし、高音加熱処理したリノール酸からは脳や肝臓、膵臓において細胞死を引き起こすヒドロキシノネナール(HNE)という過酸化脂質が発生します。サラダ油(サラダにかけるという意味の油で、様々な植物油を含む)やキャノーラ油はその製造過程で200〜250℃の高音で加熱処理するため、出荷時点でヒドロキシノネナールを発生させています。そのサラダ油やキャノーラ油を炒め物や揚げ油として再加熱し、さらに増えたヒドロキシノネナールを、誰もが知らぬ間に摂取し続けています。幼い世代のアトピー、子育て世代の不妊、中高年の生活習慣病による短命、高齢者の認知症などの背景には、こうした植物油過剰摂取の害があります。パッケージを見て、「植物油」「植物油脂」と表記されている商品も避けるべきです。市販のドレッシングは要注意です。

積極的に摂取すべき油脂

oil
  • ω3脂肪酸

 体内で合成できない必須脂肪酸で、日本人は圧倒的に不足していると言われています。ALA(α-リノレン酸)、DHA、EPAの3種類があり、体内の炎症を軽減したり、うつ病などのメンタルの不調を改善したり、肝臓を癒し、睡眠の質を上げる作用などがあります。亜麻仁油、エゴマ油などを最近よく店頭で目にします。高音加熱には弱いので、ドレッシング代りにサラダにかけて摂取するのが良いでしょう。魚を食べるなどして自然の食品からも摂取したいところですが、不足している自覚がある人はサプリメントを活用して補給するのも選択肢の一つだと思います。

  • オリーブオイル

 酸化しにくく、抗酸化物質が豊富なオイルですので積極的に摂取していきましょう。オリーブオイルの中でもエキストラバージンと名乗れるのは、すべての理化学分析基準をクリアするのはもちろんのこと、風味官能検査で味や香りに欠陥が一つもないことが条件です。ただし、日本産はエキストラバージン表示の法規定がなく、他国から輸入されたオリーブオイルも「ボトル詰めされた場所が属する国が原産国」となっており、イタリア産などの輸入物もオリーブの産地が誤魔化されている可能性があるようです。あまりにも安いオリーブオイルはさることながら、高級なものでも100%品質が保証されている訳ではないということは豆知識として知っていても良いでしょう。

  • MCTオイル

 Medium Chain Triglycerides 中鎖脂肪酸を含む中性脂肪のことです。脂肪酸を形成している炭素の長さが8-12程度で比較的短い脂(飽和脂肪酸)です。水溶性が高く、リンパ管を経由することなく直接肝臓に到達し、代謝されてケトン体になります。脂肪は直接脳に到達することはできませんが、ケトン体は直接脳に入って、エネルギーとして使われます。そのため、通常脂肪は摂取してからエネルギーとして消費されるまで時間がかかりますが、MCTオイルはインスリン抵抗性や代謝が低下していても、ブドウ糖の代わりにすぐにエネルギー源になります。高齢者の認知機能改善が報告されています。
 また、カンジダ抑制(抗真菌)効果も報告されており、適度に摂取することで、糖分過剰摂取から生じる真菌感染の予防になります。
 MCTオイルはココナッツオイルの一部の成分です。熱に強く安定しているココナッツオイルと違い、沸点が約160℃と低く、炒め物などに使用すると泡立ちや発煙を起こして危険であるため、直火での加熱は控えて、サラダや飲み物にかけたりして摂取していきましょう。

  • グラスフェッドギー

 グラスフェッドとは、自然の環境で放牧された、天然の牧草飼育のことです。トウモロコシや小麦などの穀物ではなく、草を食べて育った牛のミルクからできたバターを精製し、アレルゲンとなるカゼインやラクトースなどの乳糖の大部分を取り除いたピュアな脂肪です。ココナッツオイルのように健康的な飽和脂肪酸が豊富で、乳糖不耐症や牛乳にアレルギーがある人でも摂取していただける脂になります。コーヒーに入れても良いですし、お料理に使っても最適です。

まとめ

 良質な脂肪を摂取することが健康にとって極めて重要であることは、もはや常識になりつつあります。トランス脂肪酸や植物油脂を避けつつ、脳や全身の細胞を活性化させるために、今回あげた健康的な油脂を積極的に日常生活に取り入れていきましょう❣️


コメントを残す