政治・経済


政治・経済
📚 安倍晋三回顧録
著者:安倍晋三 聞き手:橋本五郎 尾山宏 監修:北村滋
発売日:2023年2月8日

おすすめ度:

評価 :5/5。

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 安倍元総理の首相在任期間は憲政史上最長でした(通算在任日数は3188日、第2次政権発足以降の連続在任日数は2822日)。2022年7月8日参議院選挙の選挙演説中に凶弾に倒れ、非業の死を遂げられました。本書は、安倍元総理へのインタビュー形式で、知られざる宰相の素顔が明かされます。
 安倍総理と言えば、デフレからの脱却をかかげたアベノミクス(「大胆な金融政策」、「機動的な財政政策」、「民間投資を喚起する成長戦略」の3本の矢を柱とする)で経済を向上させたことが重要です。機密情報を守るための特定秘密保護法、憲法改正は実現できなかったものの、従来の憲法解釈を変更して集団的自衛権の行使容認に道を開いたこと、外交・安全保証政策の司令塔となる国家安全保障局を発足させたこと、などで日本の安全保障政策を推進したことも重要な功績です。
 また、江戸時代後期の光格天皇以来、約200年ぶりとなる退位による皇位継承が行われました。大変な苦労があったようですが、時代に選ばれた保守政権の使命だと思い取り組まれたとのことです。米中露をはじめ、世界各国の首脳と直接会談を数多く行い、信頼関係を構築し、国際社会の中でリーダーシップを発揮されました。特に米国のトランプ大統領とプライベートを含めた親密な関係を構築したのは、安倍総理がアメリカ大統領からも絶大な信頼を得ていた証であるし、日米同盟が最も強固な期間でありました。「外交の安倍」と言えるかもしれません。
 決して順風満帆だったわけではなく、政権を倒しにくる財務省、党内外の反対勢力との暗闘、乱高下する支持率との対峙で、孤独な戦いの中、逆風を恐れずに国益のために決断を繰り返したとのことです。ときに保守層からも100点満点を求められて手厳しく批判されることもあったようですが、現実の政治と折り合わせながら決断されてきました。国のトップたるもの、バランス感覚が必要なのでしょう。
 本書では、このように批判もされながら長期政権を担った安倍元総理の手の内と舞台裏がご本人の言葉で語られています。トップの立場になって政治を考える上で参考になります✊

📚 株式会社アメリカの日本解体計画 「お金」と「人事」で世界が見える
著者:堤美果
発売日:2021年1月1日

おすすめ度:

評価 :5/5。

🎉✨


 アメリカ合衆国なんていうものはもうどこにもない。株式会社アメリカになってしまいました。その中核はGAFAのような世界中で商売をするグローバル企業とそれをバックアップするウォール街です。そして、日本人が気づかないところで、法律が改正され、土地・水・電気・医療・薬・種子などがグローバル企業に奪い取られています。
 「今だけカネだけ自分だけ」という価値観は彼らだけではなくて、日本のメディアや官僚や政治家や利権団体が共有しています。私たち日本人が知らぬ間に奪われそうになっている日本の宝物の存在に気づき、グローバリズムに対抗して「日本売り」を食い止めなければなりません。国民の命やライフラインに関わるインフラは、絶対に外国資本に売ってはいけません。

 マンガ版が登場して株式会社アメリカの日本解体計画がより分かりやすく描かれています。

  • アメリカを観察するうえで見るべきポイントは「お金の流れ」と「人事」。どこから政界にお金と人が流れ込んできているのかをチェックすれば、真の権力構造が見えてきます。
  • ウォール街は世界中で常に金儲けのネタを探しており、日本はウォール街にとって大事なVIP客です。株式などのハイリスクな金融商品を買っている優良顧客はゆうちょ銀行農林中央金庫、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)ソフトバンク。日本人の大切な郵便貯金、年金、農協のお金などの資産をウォール街はずっと狙っています。
  • ゆうちょ銀行にせよソフトバンクにせよ、大きな金が動くところにはゴールドマン・サックス出身の人間が入り込んでいます。
  • アメリカの対中強硬派は中国との関係を深めようとするソフトバンクが危ない橋を渡ることを歓迎しています。一方、日銀はソフトバンクの株の含まれるETF(上場投資信託)を大量に購入して、大株主になっています。
  • ホワイトハウスのあるワシントンには大量の札束が降り注いでいます。「政治はローリスクでハイリターンな投資商品」と言っている人もいます。ウォール街は共和党と民主党の両方に投資して、選挙でどちらが勝っても賭け金が増えて戻ってくる仕組みを作っています。
  • 2016年の大統領選挙ではトランプが「グローバル企業から献金をもらわない」と宣言し、お金と政治家の関係にうんざりした人々が反動でトランプに投票しました。ただ、トランプ政権になってウォール街の影響力が減ったというわけではありません。
  • これから投資商品として価値をもってくるのは物ではなく、「未来に関するもの」「命に関するもの」「世界中で奪い合いになるもの」、具体的には水、種子、薬、農地などです。
  • 効率よく売り買いするのに邪魔になるのが各国の法律や憲法です。ウォール街の営業マンのようにアメリカの政治家が各国で交渉します。
  • TPPは経済ブロックを構築する国際条約で、法律の規制をまとめて取っ払い、関税だけでなくサービスや投資の自由化を進めることを狙っています。
  • 日本のようにアメリカの強い影響下にある国には圧力をかけるだけです。交渉が通用しない国には強硬手段をとります(アルゼンチンの大統領買収イラク戦争など)。
  • イラク戦争当時、アメリカのマスコミは「イラクが大量破壊兵器を所有している」「イラクの脅威から国際社会を守らねば」と書き立て、日本でも同じ状況でした。この嘘がマスコミがアメリカ国民の信用を失うきっかけになりました。イラク戦争で嘘をついたマスコミが支持するヒラリーは信用できないということも、のちの大統領選挙でトランプの勝利につながりました。
  • アメリカにとって戦争とは大きな儲けが出る公共事業であり、戦争が終わったあとは復興事業というビジネスもあります。イラクの法律を好き勝手変えて国営企業の民営化を進めました。民営にすることでグローバル企業が入りやすくなり、長期間にわたってグローバル企業に金が流れ込む仕組みが作られました。
  • ウォール街やグローバル企業はイラクの石油産業チグリス・ユーフラテス川の水源食の主権も奪いました。伝統的な農業からモンサント社による遺伝子組み換え種子と除草剤のセット売りを押し付けて、ウォール街の食分野の投資市場を一気に開花させました。(アフガニスタンも同じパターン)
  • 種子法廃止種苗法改正も、グローバル企業が食や農業分野で日本に乗り込むための似たような動きです。
  • 国や地方自治体の諮問機関である有識者会議は国民がメンバーを選ばず、経団連企業関係者や各分野の有識者メンバーで構成されており、国や自治体が進めたい法案がスムーズに可決されるようになっています。
  • アメリカでは企業が高い金でロビイストを雇っていますが、日本の有識者会議はコストをかけずに身内を堂々と送り込めるので、フリーハンドで法案に口を出せる仕組みです。彼らの背後にはウォール街がいます。
  • 外国による土地購入は安全保障に関わり、どの国でも厳しく規制されていますが、日本は農地法改正で土地所有規制をどんどん緩め、外国企業が参入できるようになりました。
  • メディアが国民にとって重要なニュースを別の報道で隠します。ビックニュースが世間を騒がせている裏で、水道法の改正案などの重要法案が通っている可能性が高いです。つまり、何が報道されたかではなく、何が報道されていないかが重要です。
  • アメリカではイラク戦争後、国民の間でマスコミに対する不信感が広がりましたが、日本のマスコミの信用度は世界でもトップクラスです。マスコミを信じすぎているとマスコミが報道しない事実に目がいかなくなります。それ以前に日本のメディアの株主には外資がかなり入っており、外資に都合が悪いことは報道しなくなります。
  • SNSはマーク・ザッカーバーグが公言している通り、強力な世論の誘導装置です。SNSでは似た考え方の人間が自然と集まり(エコーチェンバー)、偏った情報ばかりが蓄積されてしまうリスクがあります。意図的に情報が操作されたり、思考を誘導される危険があります。

 私たち一人ひとりが、世界で何が起こっているのかを知り、世界全体を動かすシステムを知り、守るべきものを決めたら世界は必ず変わっていくでしょう。自分の頭で考えて、家族や子供たちと日本を守りたいと思います👍

📚 日本滅亡論 中国に喰われるか、大国に返り咲くか
著者:藤井聡
発売日:2021年11月15日

おすすめ度:

評価 :4/5。

 ほとんどの日本人は、今でも「日本は世界の大国だ」と思っているかもしれません。GDPは米国、中国に次ぐ世界第3位ではあるものの、経済成長していないのは世界中で日本だけであり、世界における日本のプレゼンスがどんどん低下しているのが現実です。
 また、歴史的にみても南海トラフ地震や首都直下地震が予想されるなど、日本は自然災害大国です。それにも関わらず、官邸の人たちは迫り来る自然災害から国民の命や財産を守ろうと本気で考えているとは全く思えない状況にあり、災害に対し日本政府は無策であると言えます。
 日本政府が国債の借りすぎで財政破綻するなんてことは絶対にありえません。なぜなら、日本政府には「通貨発行権」があり、日本の国債は100%日本円建てであるからです。インフレ率が適正の範囲内にある限り、日本政府は通貨発行をして、国民を守るための財政支出をする、言い換えれば、緊縮財政をやめて、経済成長するために欧米諸国並みの投資をするのが大事であると、筆者は主張しています。
 政府や自治体がやっている国民のライフラインに関わるインフラ事業は、民間がやっても儲からないからやっているのです。しかし、「民営化こそ絶対善である」と主張する新自由主義者たちは、政府がルールを決めずに、ルールなしの同じリンクの上で自由に戦い、勝ったものが正義だ、と主張しています。日本の企業の99%が中小零細企業ですが、このような土俵で戦えば、中小零細企業はどんどん潰れていき、大企業だけが生き残ることになります。そして、ここで登場してくるのが、チャイナマネーであったり、グローバル企業になるのです。

 国民生活を苦しめる緊縮財政と、格差拡大を導く新自由主義的なグローバル化について、国民が正しく理解し、正しい政治家を選ぶことが重要です。
 日本の問題がわかりやすく解説されており、すぐに読み切れる本です。