哲学・思想


哲学・思想
📚 李登輝の箴言 未来の日本人へ
著者:林建良
発売日:2023年9月13日

おすすめ度:

評価 :5/5。

🎉


李登輝の箴言

 著者は台湾人の医師で、東京大学大学院医学研究科博士課程を修了されています。2001年から約10年間にわたり、李登輝のスピーチライターを務め、日本語のスピーチの約半分を書き、台湾語のスピーチも書いています。そういう思想・世界観が一致している人が書いた李登輝伝です。

 李登輝は国民党による独裁政権下の戦後台湾で、自ら「中華民国」総統として民主化に成功した後も、台湾のみならず、国際政治に隠然たる影響力を持ち続け、自由・民主・繁栄の台湾を創る為に、死ぬまで努力し続けました。そして、自由民主国家としての台湾は、現在経済的にも繁栄しています。理想の政治家である李登輝は、知性も教養もあり、品格もあり清潔で、理想をかかげて、しかもパワフルで大きな仕事を成した人です。そして、2020年に97歳という天寿を全うして他界しました。李登輝は偉大な人物ですが、威張ったり、格好をつけたりせず、常に腰が低く、誰にでも親切であったといいます。

 李登輝は、戦前の台北高校、つまり日本の旧制高校出身で、京都大学に進学し、2年間学んだ後、日本の陸軍に入り、22歳のときに名古屋で終戦を迎えました。専門の農業経済学だけでなく、文学、哲学、芸術、音楽、武道など、国を背負う若いエリートのための日本の全人的教育を受けました。戦後の混乱期を経て台湾に帰り、台湾大学で中国的思想を学び、2度のアメリカ留学を経て西洋的教養を身につけました。「中でも一番自分の心が影響を受けたのは日本文化だった」「日本精神といえば武士道精神と大和魂だ」と語っていたそうです。

 李登輝の思想、精神、哲学の真髄は「誠実自然」から始まって、「私が私でない私」で終わるといいます。全て李登輝が自分で経験してきたものであり、戦後台湾の歴史の凝縮であるといえます。

  • 誠実に対処することが最善の策である。
  • 精神的なもの、道徳的なもの、知識や知恵をいうレベルのものこそが、本当に大切なもので、生涯をかけて貫いて高めていかなければいけない。
  • リーダーである人間は、信仰心、慈悲、寛容を持って、社会的公義のために働くべきである。
  • 超越」ー 万物は変化していく、変化そのものが自然の摂理である。自分が自分に挑戦し、成長していく。
  • 無私」ー 自分だけものを追求せず、できるだけ無私の精神で公のために尽くすことが、自分の幸せにつながる。

 22歳まで生まれながらの日本人であった李登輝さんは、まさに武士道精神、大和魂を体現した存在だったと言えます。人生の指南書としたい一冊です。

📚 「武士道」解題 ノーブレス・オブリージュとは
著者:李登輝
発売日:2006年4月6日

おすすめ度:

評価 :5/5。

🎉


武士道解題

かくすれば かくなるものと 知りながら やむにやまれぬ 大和魂(吉田松陰)

 既に日本にとっては「外国人」であり、「台湾人」である自分が言っても、国内外で怒り出す人が出てくるかもしれないけれども、このような気持ちで、日本の伝統的価値観の尊さを世に問いたいと思って、書かれたのが本作です。no-blesse o-blige(ノーブレス・オブリージュ)とは、金持ちや身分の高いものは、そうでない人々を助けなければならないという考え方です。

 李登輝さんは「日本統治時代」に日本国民として、教養を重視した戦前の高度な教育を受けられました。当時の日本社会は、学校・家庭・社会でも道徳教育が重視され、自己修練を目指す倫理的な空気が非常に強かった(当時の若者たちを育んでいた思索的で哲学的な「知育」および「徳育」の環境は素晴らしかった)ようです。古今東西の先哲の書物や言葉にふんだんに接する機会があり、「死とは何か」「生とは何か」という大命題を考え続けていたそうです。内村鑑三、西田幾多郎、鈴木大拙らが遺した素晴らしい「伝統」の下で教育を受け、その中でも、新渡戸稲造の哲学・理念やその全人格に、読書と思索を通じて強い影響を受けられた、特に『武士道』の中で強く強調している、「信」や「義」や「仁」といった徳目は、その後の大きな心の支えとなったとのことです。伝統的価値観を大切にする理由は、公儀(Justice)に殉ずる心構えや気概に通じるからであり、それがあって初めて真のリーダーシップを発揮しえるのです。

 新渡戸稲造は「義」と「勇」と「仁」と「忠」と「誠」とを不即不離のものとして、渾然一体となった「武士道」精神の根幹をなすものと説いています。そしてノーブレス・オブリージュを旨とすべき者(武士)として、最も卑しむべき「私利」や「私欲」ではなく、「公の為」を思って行動するべきだ、とのことです。
 「仁」とは相手の気持ちを忖度できるような寛く深い愛情に裏打ちされた「思いやりの心」であり、そして、他人の感情を尊敬することから生じる謙譲・慇懃の心は「礼」の根本をなす、つまり「仁」の裏打ちには必ず「礼」があるとのこと。

 今の若い人はあまり本を読まない、せっかく本を読んでも大ざっぱに表面的にしか読まなくて、心を入れて読むというようなことをしなくなっている。だから、この本の中では単なる知識としての精神論よりは、「武士道」精神の根幹である「実践」することの大切さを何よりも強く説かれた、とのことです。戦後日本は民主化の過程のもとに、外部的な力により相当の自己否定、伝統の喪失に陥りました。この状態から脱却し、「人生いかに生きるべきか」という日本人の新しい精神的支柱を求めて提案されたのが、この「武士道」解題です。

📚 ユダヤ5000年の教え
著者:マービン・トケイヤー  訳者:加藤英明
発売日:2016年10月3日

おすすめ度:

評価 :5/5。

🎉


ユダヤ5000年の教え

 ユダヤ人はスポーツだけは苦手であるが、他の分野(科学、政治、芸術、音楽、文学、ビジネス、ジャーナリズムなど)では成功者がひしめいています。どうしてそうなるかと言うと、ユダヤ人が先天的に優秀なのではなく、民族が育ってきた歴史のなかに培われる伝統と文化によるとのこと。1800年以上もの歳月にわたって、過酷な迫害を蒙り、国土もなく、辛酸を味わってきたので、『旧約聖書』『タルムード』『ミッドラッシュ』を通して、知識と知恵(処世術)を学ぶこと、教育こそがユダヤ人にとって何よりも重要だったのです。ユダヤ人は知性を武器として身につけて、圧迫をはね返し、人生の頂点を極めてきました。学問は血のようなものであったのです。

  • あなたが生きているのは、今の一瞬でしかない。一日一日が全人生であり、さらには一分、一秒が全人生なのだ。
  • 時間とお金、二つの中では、時間の方が大切であることを忘れてはならない。
  • 成功するためには、勤勉と忍耐が必要である。
  • ふくれた財布が素晴らしいとは言えない。しかし、空の財布は悪いのだ。空なのに、世界で最も重いものは何か。空の財布である。貧乏は恥ではない、しかし、名誉だと思うな。
  • 金持ちになる方法は一つある。明日やる仕事を今日やり、今日食べるものを明日食べること。
  • 人間は、色々な要素から成り立っている。喜怒哀楽・・・笑い、泣き、喜び、怒り、悲しみ、楽観、悲観。バランス、バランス・・・バランス。
  • 失敗したことよりも、やってみなかったことのほうが後悔は大きい。
  • 最高の知恵は、”親切”と”謙虚”。
  • 人間のもっとも親しい友は知性であり、最大の敵は欲望である。
  • 子どもに教えるもっとも良い方法は、”自分が手本を示すこと”である。

 民族の歴史・神話・偉人たちの足跡をしっかり学んで足元を固め、そして苦労を跳ね返して、学び実践し続けることが、日本を再興するために大事ですね。知恵(処世術)は昔も今も変わりません。知識とともに知恵も学ばねば🤗 恋愛と結婚についてもためになる知恵が書かれています。

📚 運命を拓く
著者:中村天風
発売日:1998年6月12日

おすすめ度:

評価 :5/5。

🎉


 明治から昭和に生きた哲人中村天風の瞑想録です。日露戦争で軍事探偵として満州で活動後に当時死の病であった粟粒結核を患い、ヒマラヤの麓でのヨガ修行の末、悟りを開かれ、結核を克服されました。この本では、挫折や病気などつらいときに、「常に前向き」という積極的人生を示されています。政財界のリーダーや大谷翔平らスポーツ選手も影響を受けているようです。

  • いつも、「清く、尊く、強く、正しく」という積極的態度で終始すれば、自分でも不思議なほど、元気というものが湧き出してくる。
  • 「人間の運命も健康も、それを完全なものにするには、結局心の持ち方が大事だ」
  • 「常に善良な言葉、勇気ある言葉、お互の気持ちを傷つけない言葉、お互に喜びを多く与える言葉を使おう」
  • 「常に最高の運命を招くべく、いかなるときにも、全てを感謝と歓喜に振りかえるよう積極的な態度を、心に命じて活きるよう、努力しよう」
  • 「人の本当の値打ちというものは、宝石でもなければ、黄金でもない。いわんや地位でもなければ、名誉でもない。ただ、信念の二文字である」
  • 「恵まれた幸運にいい気になって、自己研磨を怠っては駄目だ」
  • 「自分の心さえ、積極的に健全にさえすれば、その肉体は自然に強健なものに作りかえられる。心を積極的にするには、すべからく何事に対しても、またいかなるときといえども、勇気、勇気で対応しなければならない」
  • 自分の理想は常に、現実のものと同じように、自分の心にはっきりと明瞭に描きなさい。そして、その描いた絵は、決して取り替えないようにしなければいけない」

 自分を救うのは、自分自身でしかありません。自分の力で運命を拓く方法を教えているのが、中村天風の哲学です。楽しい理想を抱いて、積極的な心で人生に向かうことがいつの時代も大事ですね。政治や宗教や医療に頼りすぎるのではなく、自分に限界を設けるのではなく、理想に向かって積極的な心を持つことが大事です🔥

📚 葉隠 現代語で読む「武士道」の真髄!
著者:奈良本辰也
発売日:2010年6月21日

おすすめ度:

評価 :4.5/5。

葉隠

 『葉隠』佐賀藩鍋島家山本常朝という人が、江戸の元禄時代の1710年から1714年頃に話した内容を、佐賀藩士の田代陣基さんが筆記したものです。この本は宗教でもなければ道徳でもない、それを超えたところにある人間の美学、「最高に生き得るための知恵」を教えています。

いかに「覚悟する」か
 ・「その日を最期」と定める。
 ・武士とは「死物狂いになる者」のこと。
 ・いまこのときに「すべてがある」と思う。
 ・「七つ呼吸する間」に腹を決める。
いかに「仕事する」か
 ・人に仕えるには「打ち込みすぎ」くらいがいい。
 ・仕事の基本は「不可欠の人」になること。
 ・「平素の養生」を心がける。
いかに「人と付き合う」か
 ・世の中には教訓をする人は多い。しかし、その教訓を喜んで聞く人は少ない。
 ・人よりすぐれた境地を得ようとすれば、他人の意見を聞くこと。
 ・平素の油断が禁物である。他人の悪口を言わない。知ったかぶりをしない。
 ・平素の身なり、物の言い方、筆づかいなどで他人に抜きん出ること。
 ・姿形をよくする心がけは、つねに鏡に映して直すこと。
 ・「過って改むるに憚ることなかれ」
 ・人に恥をかかせてはならない。
 ・教育の技法は「手本」を真似させること。
いかに「自分を高める」か
 ・一生涯を通じて探求して、その決心を忘れることなく修行するべきである。
 ・その日その日の過ちを書き記して、今日一日を反省する。
 ・よいことは一口で言うと苦痛をこらえること。苦労しているときは心配ない。
 ・病気になる前に病気の原因を除くこと。
いかに「運をつかむ」か
 ・誰も彼もが気短になったせいか、大事を仕損じることがある。わが身の修養を怠らなければ、いつかは念願が達し、お役に立つことができる。
 ・物事を律儀や正直にばかり考えて、心が小さくなっていては、男らしい仕事はできない。

 戦前ヨーロッパから侵略されるのを避けようとする時に一番活用されたのが武士道であり、武士道の最大の巻物がこの『葉隠』だったとのことです。これは佐賀藩なのですけど、武士道精神というのは日本男児がみな持っていて、強さの秘訣であったのだと思います。

📚 葉隠入門
著者:三島由紀夫
発売日:1983年4月1日

おすすめ度:

評価 :4.5/5。

葉隠入門

 「武士道といふは死ぬ事と見付けたりの一句が有名な「葉隠」。その真髄は、死を覚悟することで生の力が得られる、という逆説的な哲学です。つまり、「もう死んでも構わないんだ。この際自分の身がどうなっても良いんだ。できるだけのことを今、最大限にやる!」と言うと、最善のパフォーマンスを繰り広げることができて、最大の仕事ができ、結果的に長生きすることができる、ということです。そして、人間の一生はわずかなので、自分の好きなことをして暮らすべきであると述べています。どう行動するべきなのかという行動哲学、どう生きるべきかという生の哲学が描かれているのです。
 そして以下の4つの誓いを毎朝神仏に祈るようにするなら、力は倍加して、うしろへは戻らないでしょう。

一、武士道において絶対におくれをとらないこと。
二、主君のお役に立つこと。
三、親に孝行をすること。
四、深い慈悲心をもって、人の為になること。

 私たちは今日死ぬと思って仕事をするときに、その仕事が急に生き生きとした光を放ち出すことを実感できるでしょう❤️‍🔥 三島由紀夫は「葉隠」を「わたしのただ1冊の本」と呼んだそうです。西洋哲学を学ばなくても、日本人の精神性に根ざした誇るべき哲学がここにあるのだと思いました。

📚 サムライ精神を復活せよ! 宇宙の屋根の下に共に生きる社会を創る
著者:荒谷卓
発売日:2019年2月5日

おすすめ度:

評価 :4/5。

サムライ精神

 自衛隊の特殊部隊を創設し、明治神宮武道場館長を勤めた著者の本です。三重県熊野の素晴らしい自然と伝統文化を礎に、内面的な成長を目指し、日本人の慣習的な倫理道徳感である「世のため人のため」とか「人様に迷惑をかけない」という考えを育まれるという。都会の無機質なオフィス街でグローバル資本主義と行きすぎた個人主義の中では、自然との共生であったり、利他的精神であったり、ご先祖様への感謝の気持ちや子孫のことを考える気持ちが薄れているでしょう。
 競争で勝った人々が支配する「利己的な世界」ではなく、皆が心を一つに力を合わせて一体となって苦楽を分かち合える「共助の世界」を再構築したい、というのが著者の考えです。
 自然の中で、共同体の中で教育や修身や礼儀を学び、伝統を継承することで、自分の存在意義を認識し、人のために尽くしたり、国を愛する気持ちが育まれるんだと思いました。

 熊野飛鳥むすびの里の自然の中で、自分を見つめ直すために学びたいと思いました。