
📚 日本酒を好きになる 〜人気YouTuberが教える日本酒新時代〜
著者:サケラボトーキョー 甲斐勇樹
発売日:2022年12月27日
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日本酒専門人気YouTube 「サケラボちゃんねる」がお届けする、日本酒初心者にも分かりやすい解説本です。日本酒と言うと、飲み会の罰ゲーム的なイメージがあったり、大吟醸のような良い酒でなければ、悪酔いするようなイメージがありましたが、今人気の日本酒は初心者でも飲みやすいフルーティーなタイプであることが分かりました。そして、日本酒はワインに引けをとらないくらい味わいのバリエーションが豊富で、ここ20年ほどの進歩は目覚ましく、知れば知るほど楽しくなっていくようです。
初心者向きでモダンな日本酒は、香りが華やかでフルーティー。甘酸っぱく、フレッシュで果実のような甘さがあり、冷やしておいしいもの。シュワシュワっとガス感があるものもあります。あまり日本酒を飲んだことがない人が「日本酒っぽくないよ」と思うような味わい。糖類を添加したようなべたべたした甘さではなく、果実のようなすっきりとした甘さとさっぱりした酸味を持つのが特徴です。
玄人向きで昔ながらのクラシックな日本酒は、旨みがたっぷりあり、温めてもおいしくなりそうなもの。日本酒が飲めない人が想像する味で、「ザ・日本酒」という味わい。淡麗辛口はこちらに入ります。古酒や熟成酒、酒母造りの生酛や山廃は例外もありますが、ほとんどクラシックな日本酒とのこと。
スーパーやコンビニの日本酒は玄人向けのお酒が多く、日本酒初心者におすすめのお酒は日本酒専門店や専門店のサイトで買うのが良いとのことです。著者のカイさんも、スーパーで売っている日本酒の7〜8割は好みではないとのこと。
写真と味わいの解説が丁寧なので、見ているだけでも楽しくなります。甘旨フルーティーな日本酒は、亀泉 CEL-24(高知)、醸す森(新潟)、よこやま SILVER 7(長崎)、Beau Michelle snow fantasy(長野)、天美(山口)、くどき上手(山形)、鳳凰美田(栃木)、光栄菊(佐賀)、一白水成(秋田)、會津宮泉(福島)、二兎(愛知)、AKABU(岩手)、あべ(新潟)、尾瀬の雪どけ(群馬)、流輝(群馬)、風の森(奈良)、紀土(和歌山)、森嶋(茨城)、鍋島(佐賀)、東洋美人(山口)、加茂錦 荷札酒(新潟)、仙禽 オーガニックナチュール(栃木)、みむろ杉(奈良)、山本(秋田)、ヤマノコトブキ(福岡)、楽器政宗(福島)、大嶺3粒(山口)、手取川(石川)、射美(岐阜)、陸奥八仙(青森)、村祐(新潟)、寒菊 Ocean99(千葉)、たかちよ(新潟)、田酒(青森)、彩來(埼玉)、獺祭(山口)、讃岐くらうでぃ(香川)など。
そして入手困難な日本酒で居酒屋で見つけたらぜひ飲んでみたい日本酒は、十四代(山形)、新政 No.6(秋田)、而今(三重)、飛露喜(福島)、信州亀齢(長野)、勝駒(富山)、川中島幻舞(長野)、龍神丸(和歌山)など。
日本酒だけに限りませんが、事前に多少の知識をインプットした上で実際に経験すると、印象に残りやすいです。旅行もそうですね。この本も参考にして日本酒はマニアックになった方が楽しいと思いました🍶🤓
📚 世界の富裕層を魅了する「日本酒」の常識 元ファンドマネジャーの蔵元だから語れる本当の話
著者:久保順平
発売日:2022年12月10日
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奈良県宇陀市大宇陀は、織田信長亡き後、織田藩が治めた城下町であり、多くの製薬会社の発祥の地でもあります。そこで300年続く老舗久保本家酒造11代目蔵元であり、イギリスでファンドマネージャーとして活躍した経歴も持つ著者が、日本酒の国内と世界におけるマーケティングの現状、日本酒の歴史と文化、酒造りや愉しみ方について解説しています。個性が強くて、今後純米酒業界を背負って立つと考えられる蔵元の紹介もあり、日本酒の理解が深まります。
- 国内では日本酒消費は長期低落傾向で、多くの酒蔵が廃業した。一方で日本酒の輸出は好調で11年連続で伸びている。
- 日本酒はグルテンフリーで、防腐剤やその他の添加物が含まれていない。
- アメリカにはすでに30ほどの小さな日本酒酒蔵がある。ヨーロッパ、中南米、アジアなどでも増えている。
- 日本酒は繊細で、穏やかな風味であり、料理とのペアリングが容易である。
- 日本酒は長い歴史の中で育まれ改良され、日本文化と切り離せない精神性を持ち、生活の一部として神道と強い結びつきのある飲み物である。日本酒にまつわる日本特有の歴史や文化、習慣をあわせて堪能する。
- ボルドーのシャトーのように海外の金融資本が、円安も相まって、小規模・後継者不在の良質な酒蔵の買収を狙っている。一方で、資金調達可能な手段が多様化していると言える。日本酒酒蔵は確実にグローバル市場に組み込まれようとしている。
- 日本は縄文時代の昔から自然豊かな四季のはっきりした国で、水がきれいな土地が多く、酒造りに適した立地が全国にあった。酒造が旅館や民芸、和菓子、食品、料理店を含むあらゆる業種の中で最も老舗が多い。ちなみに、日本最古の企業は578年に聖徳太子が四天王寺を建立するために創業された、建築の「金剛組」である。
- 大雑把に言うと、ヨーロッパ人は古いものは良いものと考える傾向にあるが、日本人は新し物好きで、古臭いものはよくないものとして使い捨てが好きである。
- 日本酒、醤油、味噌、酢は糀を使い発酵過程を経てできるもので、大昔から稲作文化と密接につながっている。
- 日本酒発祥の地と主張しているのは、兵庫県の伊丹と島根県の出雲。奈良は日本清酒発祥の地と言っている。
- 貝原益軒の「養生訓」にある記述や最近の研究成果から、日本酒には精神的緊張をほぐし、ストレスを緩和し、免疫機能を高めてくれる機能があることが分かる。日本酒を適量飲むことは万病に効果を発揮する。
- 今日本酒業界の主流は、甘い味わいでフルーティな香りのするお酒である。新潟県は淡麗辛口、山形県や福島県、静岡県は吟醸王国とか言われるような一定の方向性はあるが、全国それぞれ流派は複雑で、西は濃厚、東は淡麗の傾向があるくらいしか言えない。原料米の種類、水質、酵母、糀菌、製法など変数要因が多過ぎるので、ワインのように味わいの要因が特定できない。
- 「完全発酵」とは、すべて生物は厳しい環境下で育てると耐久力がついて、正念場で生命力が増してエネルギッシュになり、素晴らしい働きをするということ。
- 酒蔵では通常、精米、洗米、浸漬、蒸し、糀づくり、酒母づくり、もろみ、圧搾、ろ過、火入瓶詰、貯蔵といった工程を経る。お米のでんぷん→グルコース→アルコールという糖化と発酵の2つの変化が同時に同じ場所で起きる(並行複発酵)。これらのすべての工程で微生物の生存状況の最適化により、余すところなく糖化と発酵を進める方法が完全発酵である。
- 生酛造り、山廃造り、速醸造りなどいくつかの酒造方法があるが、これらは空気中の野生酵母やよくない微生物が入り放題の環境で、いかに日本酒酵母だけを順調に育てるかを目指してのスタイルの違いである。真っ当な生酛造りをやると必ず発酵力の強い酵母になるため、深い旨味があり、かつ切れ味のよい辛口のお酒になる。
- しっかりとした造りでできた純米酒は、新酒の時期は渋みが強く、辛くて硬いと感じられることがあるが、熟成することで甘い、辛い、渋い、苦い、酸っぱいなどの風味が渾然一体となって深みが出てくる。久保本家酒造では10年以上酒蔵で寝かせた「長期熟成酒」を造っている。生酛純米大吟醸酒など。
- よく磨いたお米で造る大吟醸より、それほど磨いていないお米で造った純米酒の方が、旨味成分が多いために、濃い風味の料理にもよく合う。
- 日本酒は味や香りだけでなく、五感で感じて味わうお酒である。それゆえ、その時に使う酒器(陶器、ガラス、磁器、錫、木といった素材や口径・厚みの違い)によって印象が変わる。
- 辛口でキレのある完全発酵純米酒は、燗冷ましが美味しい。少しずつ冷めていくことで、味わいがどう変化するかを感じることができる。
- 純米燗酒こそが体になじみやすく悪酔いせず、翌日も爽快に目覚めることが出来る。
久保本家酒造の家訓は「一年の計は田にあり。百年の計は山にあり、それ以上は人にあり」。長い期間にわたって、会社経営は人を育てるしかないということです。そして、小さな酒蔵が目指すべき独自のニッチ市場を目指して、完全発酵生酛純米酒を造っています。近江商人の「三方よし」に因んで、お客様や社会の動向と製造現場の意見、そして経営者として目指すもの、この3つがぴったりと合致するところを目指していきたいとのことです。「売り手」と「買い手」がともに満足し、さらに「社会貢献」もできるということですね👍🍶
📚 醤油・味噌・酢はすごい – 三大発酵調味料と日本人
著者:小泉武夫
発売日:2016年11月16日
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料理の素材を引き立て、味付けの決め手となる調味料。古くから用いられてきた発酵調味料の醤油・味噌・酢は、日本の食卓に欠かせないばかりか、海外での需要も年々高まっています。本書では、発酵学の第一人者である著者が、これら三大調味料の製造過程や成分を解説し、我が国の食文化に根ざした歴史や魅力を述べています。また、血圧上昇や肥満の抑制、発ガン予防などの驚くべき効能も紹介しています。
- 腐敗菌の生育には厳しく、発酵菌には優しい塩は、発酵調味料を造るのに不可欠で、極めて大切な材料ということになって使われてきた。
- 「醤油」は大豆、小麦、魚、鳥、獣肉などタンパク質を多く含む動植物を原料として、それに食塩存在下で麹菌や発酵微生物を増殖作用させ、アミノ酸や糖類といった呈味物質に変えた調味料の総称である。
- 醤油を造るのには、大きく分類して麹菌、醤油酵母(耐塩性酵母)、醤油乳酸菌(耐塩性乳酸菌)の三種の異なる発酵微生物が必要となる。
- 日本の発酵調味料で最も古いもの(縄文時代晩期)と推測されるのは、魚介類を塩とともに漬け込んで発酵させる魚醤である。現存する代表的魚醤(日本三大魚醤)は、しょっつる(秋田)、いしる(能登)、いかなご醤油(香川や岡山)。
- 日本を離れて外国の土に足を付けたとたん、もう日本の料理が恋しくなり、食べたくなり、早く帰りたくなる。刺身、鮨、天麩羅蕎麦、納豆、うなぎ、海苔、生卵と漬物の朝ご飯など、すべて醤油なしではつくれないものばかり。日本人のDNAには、醤油の味と香りがしっかりとまとわり付いているのだろう。
- 戦国時代、諸大名は戦場においては常に強い兵隊を備えておかなければならず、そこで重要な兵糧として注目されたのが味噌であった。味噌の原料の大豆は極めて豊富なタンパク質を含んでいて、これを味噌にすると、そのタンパク質が発酵によって分解され、スタミナ源、活力源となるアミノ酸になる。牛肉のタンパク質は平均17〜18%であるのに対し、大豆は16〜17%でほぼ同じである。「大豆は畑の肉」と考えられ、味噌をからめたおむすびはさしずめ「肉巻き飯」であろう。
- 味噌は大豆を主原料に、米または大麦、大豆麹、塩を混ぜてそれを発酵、熟成させた調味料である。醤油は、ドロドロとして液体状の諸味で発酵させ、それを搾って最終製品は完全なる液体状であるのに対し、味噌は仕込みの最初も途中も終わりも個体で、最終製品も個体状であるところに違いがある。
- 味噌のうま味や酸味、香気成分は料理される材料を丸ごと包み込むので、出来上がった料理は誠にもって美味しくなる。また、味噌には出汁と調和するという効能がある。アミノ酸を多く含んでいるため、出汁からの呈味成分と作用する範囲、量が大きいため、とても美味しくなる。
- 味噌には、他の食品に比べて驚くほど強い抗酸化力が備わっている。味噌中に大豆から溶け出してきたサポニン、イソフラボン、トコフェロール(ビタミンEの一種)、レシチンのような抗酸化物質や、発酵によって生じたさまざまな抗酸化力のあるペプチドあるいはメラノイジンのような物質である。
- 味噌、醤油、納豆などの大豆発酵食品では大豆アレルギーが起こらない。味噌の脂質は大半が不飽和脂肪酸で、血中のコレステロールを下げる。味噌が発酵して生じる遊離脂肪酸は、皮下でできるメラニン色素の合成を抑制する効果がある(昔から味噌を扱う人は肌がきれいだといわれる)。レシチンという脂質は動脈硬化を予防する。大豆の食物繊維は大腸癌を防ぐ効果がある。味噌に含まれる大豆を通じてオリゴ糖を摂取すると、腸内のビフィズス菌が増えて腸内環境が改善する。味噌のビタミンEは酸化を防止し、食品の保存効果が大きい。1日2杯以上の味噌汁の摂取が高血圧を有意に抑制したと報告されている。放射線防御効果がある(多糖類や香り成分のピラジンなどが放射性物質と結合し、排出が促進されるのではないかと推察されている)。胃癌や乳癌に対する抗腫瘍性と抗変異原性が報告されている。
- 酢は酒に含まれるエチルアルコールに酢酸菌が作用してできる酸味を有した発酵調味料である。穀物原料だと日本酒やビールなど、果物だとワイン(ブドウ酒)やリンゴ酒などから造られる。
- 酢を体内に入れるとTCA回路の循環を活発にし、ピルビン酸が乳酸に変化せず分解され、疲労か解消されやすい。食酢を摂ると、血清中のコレステロールが低下する研究報告は非常に多い。食酢を食事後すぐに摂ると、血糖値の上昇を抑制する研究も多く報告されている。酢にはACE(アンジオテンシン変換酵素)の作用を阻害したり、カルシウム吸収促進作用も認められており、1日当たり18ミリリットルという少ない摂取量で高血圧患者の血圧を低下させることが期待される結果が得られている。酢の肥満防止への効果についても多くの研究がなされている。カルシウム吸収に著しく効果があり、骨粗鬆症を予防する。TCA回路との関わりでグリコーゲン再補充促進作用があり、疲労の回復に効果を示す。胃の粘膜を保護したり、血管拡張作用による血流の増大、血行促進。そのほか、唾液の分泌促進作用、アレルギー発生制御、感染症の予防、免疫機能の上昇、血液のサラサラ効果などが挙げられ、酢は底力のある、すばらしい発酵食品である。
日本人は昔から、味付けの基本となる発酵調味料の醤油、味噌、酢を、すでに奈良時代から食卓へ登場させていました。味噌や酢には健康を維持し、老化を防ぐ保健的機能性がしっかりと宿っていますし、日本の各地で地域性の違いによって、地域の食文化として残ってきました。水田を耕し、米を育て、それを炊いて食べる日本人にとって、その飯に味噌をのせるだけでも、醤油をかけるだけでも、酢飯にするだけでも、美味しく食べられるのは、この三大調味料だけです。食を見直す第一歩として、三大調味料を大事にしたいです!🍙