不定愁訴、老け顔、薄毛対策のために、まず頸部、頭部の解剖を知ろう


 昔は多くの人が農業などで肉体労働する時間が長かったのが、現代ではデスクワークの時間が増えて、PCやスマホを長時間操作するようになりました。また、以前は徒歩や自転車で移動していたのが、車での移動が増えた結果、現代人は慢性的に運動不足の状態です。その結果、姿勢が悪化し、筋肉が衰えて凝り固まるようになり、血流の低下・神経の圧迫などから様々な症状が生じています。首から上の症状では、肩こり、頭痛、頭重感、めまい、難聴、耳鳴、目の疲れ、顔の痺れ、顔の浮腫み、倦怠感などでしょうか。顔や首に腫れ物(腫瘍)ができることもあります。耳鼻咽喉科で扱う疾患で言うと、さらに口の症状、鼻の症状、のどの症状などがあります。癌の場合は、手術を含めた集学的治療が必要ですし、手術や投薬が必要な病態もありますが、多くの症状は不定愁訴か、それに近い軽い症状です。つまり、検査上異常が見つからない状態です。このような不定愁訴のためにドクターショッピングをしたり、最終的に心療内科にたどり着いて薬漬けにされたりするケースもあると思います。しかし、多くの場合は自律神経の不調や運動神経・感覚神経に伴走する血管の血流不全、リンパ流の停滞、筋肉の緊張が関与しています。そのため、筋緊張をほぐして、血流とリンパ流を改善し、神経を刺激してやることで、症状を改善させることができるケースが多いと考えられます。

 また、筋緊張をほぐして、血流とリンパ流を改善してやれば、顔面や頭皮のシワをなくし、肌をきれいにして老け顔を解決したり、薄毛対策にもなります。
そのためにも、まずは頭頸部の解剖について知りましょう。

頭頸部の筋肉

muscles of head & neck

 頭部表面の筋肉は、起始が頭蓋骨で、停止が顔の皮膚のため、皮筋と呼ばれます。前頭筋後頭筋、そして頭頂部を覆う中間腱である帽状腱膜があります。耳の上にある大きな筋肉は咀嚼筋の一つである側頭筋であり、頬や口元の筋肉と繋がっています。また胸骨弓を起始とし、下顎角を停止とするのが咬筋です。顔面筋は、その働きから表情筋という呼び方もあります。眼、鼻、口の開閉が基本的な機能です。穴を閉じる筋は輪状(眼輪筋口輪筋)で、開口する他の筋は眼や口から放射状に広がっています。

 頸部の筋肉は、広頚筋(顎から頚へ、さらに鎖骨を超えて、胸部にまで至る)や胸鎖乳突筋(胸骨と鎖骨を起始とし、側頭骨の乳様突起が停止)など浅い部分にある浅頚筋と、舌骨に付着する舌骨上筋群、舌骨下筋群、さらに深い部分にある深頚筋に分類されます。他にも僧帽筋が背部を覆っています。

頭頸部の動脈、静脈、リンパ管、神経

head & neck

 心臓からは左右の総頸動脈が胸鎖乳突筋の内側を上行し、第4頸椎レベルで内頸動脈外頸動脈に分岐します。内頸動脈は屈曲しながら上行し、硬膜腔内に入って眼や脳を養います。外頸動脈は甲状腺、舌、喉頭、顔面などへ栄養血管を分岐し、浅側頭動脈となって頭蓋の外の構造を養います。

 また、脳、頭蓋、顔面、頸部を栄養した血液は外頸静脈前頸静脈内頸静脈などを経て、心臓へ還流します。

 リンパ球やマクロファージなどの免疫細胞が集まったリンパ節は腋窩や鼠径部と並び、頭頸部にも多く分布しており、リンパ管が張り巡らされています。タンパク質、ミネラル、脂肪分(乳糜)を血管に送り返します。損傷した細胞やがん細胞、異物をこし取り、きれいなリンパ液を静脈に戻します。リンパ系は体にとって下水道のような存在です。

 頭頸部の表面の神経は頭部と顔面の前方は第5脳神経の三叉神経が分布し、触った感じ(触覚)、痛み(痛覚)、熱い冷たい(温度覚)などの感覚情報のセンサーとなっています。三叉神経は眼神経(目から上のおでこ)、上顎神経(目と口の間のほっぺた)、下顎神経(口から下のあご)の3つに分かれて分布しています。耳から前方の頸部は頚神経叢由来の神経枝、頭部と頸部の後方は頚神経後枝が分布し、知覚を司っています。また、耳の下から前方へ第7脳神経の顔面神経が分布し、表情筋の運動や舌前2/3の味覚、涙や唾液の分泌を司っています。脳神経はその他にも計12対あり、顔面、頸部の臓器に分布しています。第10脳神経の迷走神経は最も広範囲に分布し、頸部と胸部・腹部の内臓の働きを支配しています。

頭皮・顔面・首のマッサージ

 全身の血流を改善するために、運動習慣が大事であることは言うまでもありません。また、首・肩のこりを解消するために、大関節である肩関節のストレッチは肩甲骨を意識しながら、日々繰り返すことが重要です。さらに、頭頸部の筋緊張緩和、血流やリンパ流を改善するために、頭皮・顔面・首のマッサージを追加しましょう。

 胸鎖乳突筋の内側には総頸動脈、内頸静脈が走っており、この筋肉をほぐすことは頭頸部の血流改善に非常に有効です。首を捻ると触知しやすいため、捻った状態でのマッサージが効果的です。頭皮表面の前頭筋、後頭筋、帽状腱膜、側頭筋などをマッサージすれば、頭皮の血流が改善し、連続する表情筋の動きも良くなります。表情筋も個別にマッサージできれば、なお良いですね。老け顔、薄毛対策になります。

 忙しくても、このようなところまでケアすることができれば、頭頸部の筋緊張が和らぎ、血流が改善するため、首から上の不調、不定愁訴に悩むことも少なくなるでしょう。頭頸部の解剖を大まかに知った上で、是非取り入れてみてください!🤗


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